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協力翻訳者  岡野(おかの)様


知財コーポレーションの仕事をするようになったきっかけ

イギリス留学から帰ってきたときに、ロンドンに行く社員を募集していたのを見つけ、応募したのがきっかけです。そのときの仕事は一般・営業事務で、イギリス人の上司の下で勤務しました。事務所が小規模で期間も一年半と長くはありませんでしたが、海外で働いたことは貴重な経験でした。その後東京に帰ってきて、社内翻訳者として勤務することになりました。
私の翻訳者としてのバックグラウンドはまず英語で、特許翻訳者に必要とされる法律や技術の知識は最初は十分ではありませんでした。そのため、専門用語を学ぶところから始めました。浜口社長(現会長)から直々に教えていただいたりしながら取り組み、徐々に軌道に乗っていくようになりましたが、技術の知識を深めるため電気の専門学校に通うことにしました。仕事をしながら週3~4日学校に通い、特にコンピュータの知識を身に着けました。社内翻訳者になった頃は技術分野別のチーム編成になっていなかったので、すべての分野を担当していましたが、チーム制が導入されることになったときに電気を選びました。
社員で良かった点として、わからないことがあったとき先輩社員に直接聞いたり、ネイティブリライターにすぐに確認できるということが挙げられます。電気チームのリーダーも10年ほど務めましたが、今思い返すと、この間に翻訳だけではなくいろいろなことを学びました。お客様と関わるのは従来から好きでしたが、お客様が求めていることを、直接会ったり話すことで理解することができました。また、社内の他部門の方と連携しながら仕事をするということも学びました。例えば、受注、起票、翻訳を終えた後の電子データの調整、チェックなど、翻訳以外にも一連の作業があることを目で見て確認できたことは、現在も役に立っています。2012年に独立してフリーランスになりましたが、社員としての経験があって今があるといえると思います。

インターネットがなかった頃

翻訳を始めた頃はインターネットが一般的ではなかったので、原稿はすべて紙でした。その頃は、お客様にプリントアウトした翻訳を直接納品しにいくスタッフもいましたし、浜口社長(現会長)が自ら、お客様のところまでバイクを飛ばして原稿を納品しに行ったこともありましたね。当時は辞書も参考資料もすべて紙媒体で、今に比べたら遥かに情報が少なく環境的には恵まれていなかったと思いますが、その頃に比べて今の方がアウトプットが増えたかというとそうでもなかったりします。
今は日本の公報もUSPもデータベースがありますし、個人個人で検索して見ることが当たり前になっていますが、その頃は勉強のために特許庁資料館(IPDLの前身)へUSPをコピーしにいくようなことも、会社の取り組みとして行っていました。公報の翻訳をするときは、企業名の英語表記を調べるのが大変でした。今では笑い話ですが、翻訳者がその会社に「会社名の英文名を教えてください」と電話して教えてもらっていました。大企業でしたら自力で調べることも可能ですが、そうでない場合は直接問い合わせる以外に手段がなかったのです。その頃は、受注台帳も巨大な手書きのものを使っていましたよ。 ただ悪いことばかりではなく、納品を持参されるフリーランス翻訳者の方と顔を合わせる機会が多かったので、コミュニケーションが密になって良かったですね。今は納品だけでなくお知らせもほとんどインターネット経由で行うようになりました。便利であり、一言も発さないで仕事ができてしまうのですが、やはり一度は会ってお互い安心できる関係を築くのが良いと思います。
徐々にインターネットが普及しましたが、導入当初はインターネットに接続できるパソコン一台を社内翻訳者全員で共有していました。自由に調べるわけにはいかず、交代で使っていました。個人個人のパソコンにネットが繋がるようになったのはそれからしばらく経った頃だったと思います。翻訳者を取り巻く環境はその頃に比べるととても変わりましたが、ネットですべて調べられるとはいえ情報が多すぎるので、取捨選択する能力も必要です。

社内翻訳者とフリーランス翻訳者の両方を経験して

社員を経験した時間が長かったから感じるのかもしれませんが、フリーランスはお客様からの情報が少ないと感じます。必要なことは頂いていますが、社員のときには実際にお話したり、お客様のメールを見ることが出来ましたので、フリーランスになってからはお客様が求めていることがわかりにくいこともあります。例えばお客様の担当者(技術者)の情報などももう少しわかれば、きめ細かいサービスが提供できると思います。仕方のないことではありますが、こうした情報の欠如はフリーランスの短所かと思います。それと、社員のときのように皆さんと一緒に作り上げるという喜びもなくなってしまいました。
時間の使い方についてはフリーランスの方が自由で良いですね。土日に働いたり、融通性が利くのはフリーランスの魅力です。休みが取りやすいのも良いと思いますが、海外に行くときなどもメール連絡がつくようにしていますし、あまり自由にしすぎるのもいけないと考えています。社員、フリー、いずれも魅力がありますが、社員時代に得た糧は大きいと感じます。

特許翻訳の面白さ/やりがい

翻訳という職業は、健康に気をつけていれば一生できる仕事です。年齢と共にパワーが落ちるなどは多少あると思いますが、ずっとできる仕事であるというのは大きな魅力です。
特許翻訳の仕事を通して、論理的に組み立てて考えることが好きになりました。日本語の明細書は一読しただけではわかりにくいこともありますが、繰り返し読んで調べながら取り組むうちに、どんどんわかるようになっていきます。英語はとても論理的な言語ですが、日本語は曖昧に書いても何となく読めてしまう言語だといえます。ですので、異なる性質を持つ英語と日本語を1対1で翻訳するのは、直訳が求められるPCT翻訳であっても困難といえます。書いてあることをかみ砕いて、整理して翻訳していくところ、そこに特許翻訳の面白さを感じています。論理的に物事を考えられれば、例え文系であっても特許翻訳は向いていると思います。私は元々筋が通らないことは好きではないのですが、特許翻訳を通してますます論理的でないことが嫌になってしまいました(笑)。仕事が人格を作ったとも言えますね。

仕事の進め方

今時アナログですが和文原稿は必ずアウトプットして翻訳しています。翻訳をしながら、内容の矛盾や気になることを手書きで書き込んでいますので、翻訳後の原稿はかなり汚れています(笑)。検索はデータを使いますが、紙は手軽に扱えるのが良いですね。
翻訳の際は、権利範囲に特に気を遣います。日本語は曖昧に書いてあることが多いので、権利が狭くならないように書くことを心がけています。クレームと本文で権利範囲が異なって記載されている場合などは、「翻訳メモ」∗1 で指摘をします。
特許翻訳には技術理解力、法律知識などが求められますが、基本はやはり英語力にあると思いますので、簡単な言葉でも英英辞典で調べるようにしています。自動詞・他動詞の用い方など、ネットで用例を見ることでわかることもあります。私はとにかくわかりやすく書くことを心掛けています。特許明細書は技術文書ですので複雑に書く必要はありません。NHKラジオの「実践ビジネス英語」は長年継続して聞いているのですが、翻訳に役立つ表現が出てくることもありますよ。
翻訳をする時間よりも、チェックや「翻訳メモ」を書く時間の方が遥かに長くかかります。チェックはなるべく3回するようにしています。1回目は、前の日に翻訳したところをチェックします。日本語と合わせてチェックし、次に進むための整理の役割も果たします。2回目も日本語を見ながら行い、最後の3回目は日本語はほとんど見ません。当たり前ですが和英翻訳は、日本語がわからない人のために行なっているので、日本語を参照しないとわからないのは翻訳ではないと考えています。英語として見ただけで最初から最後までできているかどうかを見るのが3回目です。1回目のチェックはその都度行います。2回目と3回目は通しで行いますが、ただ2回目と3回目は日にちを変えて行うようにしています。そうすることで自分が行った翻訳を違う目で見ることができるのです。ノンネイティブなりに、誰が読んでもわかりやすい英語を書きたいと思っています。また、このチェック方法は自分には合っていますが、翻訳者はそれぞれ自分に適したチェック方法を確立していけばいいと思います。
「翻訳メモ」はお客様の立場に立って書くようにしています。納品後の問い合わせの手間などをを省くために、通常とは異なる用語を選択した場合などできるだけその理由も添えるようにしています。コメントは短すぎても長すぎてもいけませんので、書かなければいけないことが多いときは、内容を選ぶようにしてします。
翻訳の仕上げにあたり、納期1日前の納品を目標にしています。早ければ良いというわけではありませんが、社内翻訳者の経験から納品後のプロセスが多いこともわかっていますので、少しでも早く納品することを心掛けています。

知財コーポレーションの好きなところ

知財コーポレーションは、人を大切にする、誠実な会社であると思います。「翻訳インターン®」制度∗2 など、人材を育てるところは他の会社には真似できないところで素晴らしいですね。「翻訳インターン®」で入社される方は優秀な方も多いので、ベテランになってもインプットを続けて良い翻訳をするよう心掛けていかなくてはと思います。
長期休暇を取った後に、温かく対応してくれるところも良いですね。とはいえ甘えてばかりではいけませんので、依頼はよほどのことがない限り引き受けるようにしています。翻訳者と翻訳会社の関係は、「持ちつ持たれつ」といったところもあると思いますので、自分の要望だけを言っていてはダメだと思います。「この人にやってもらえると安心」「仕事が丁寧なので継続して依頼したい」とずっと思ってもらえるような翻訳者でありたいです。

∗1 翻訳にあたり気づいた原文原稿の誤りや、原文の解釈、使用した技術用語など、お客様に伝えるべきことをまとめた書類

∗2 1997年から実施している当社独自の翻訳者育成システム。1年間の嘱託勤務によるOJTをベースに、社内ベテラン翻訳者やNative Technical Editorの指導のもとで特許翻訳の基礎から実務までを習得する制度

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